
昔は「いいモノを持つこと」が豊かさの証でした。
高性能なスマホやデザインのいい洋服、立派な車や家。
モノを持っていることが「成功している人」「幸せな人」の印だったのです。
でも今は、それだけでは人は動きません。
スマホを買うときに「性能がすごいから」だけで決める人は少なくなりました。
「そのスマホで何ができるのか?」──そこが大事になっているのです。
スマホなら「友達とつながれる」「大切な思い出を残せる」、
洋服なら「着ることで気分が上がる」「自分らしさを表せる」。
つまり、モノそのものの価値ではなく、それを通して得られる“体験”の価値が重要になってきました。
例えば、同じコーヒーを飲むにしても、
「ただコーヒーを買う(モノ)」よりも、
「おしゃれなカフェで友達と語らいながら飲む(コト)」の方が、心に残りますよね。
これが、モノからコトへの変化です。
体験が大事にされるようになると、次に人が求めるのは『トキ(時間)』です。
「どんな体験をするか」だけでなく、
「誰と」「どんな瞬間を」過ごすのかが大切になってきました。
たとえば、美味しい料理。
ひとりで食べてももちろん満足できますが、
「大切な人と誕生日を祝って、その料理を囲む時間」は、特別な思い出になります。
つまり、同じ体験でも「その場にいる人」や「その時の状況」で価値が大きく変わるのです。
旅行も同じ。
景色がきれいな場所に行くだけではなく、
「友達と一緒に笑い合った」「恋人と静かに夕日を見た」──
そんな時間の積み重ねこそが、心に深く残っていきます。
このように、体験そのもの(コト)を超えて、
“誰と、どんな時間を過ごすか”というトキの価値が注目されるようになってきたのです。
「誰と、どんな時間を過ごすか」が大事になってきた今、
さらにその先に求められるのが『イミ(意味)』です。
「なぜこの体験を選ぶのか?」
「それは自分にとってどんな意味を持つのか?」
人々は“時間の価値”を超えて、“生き方や考え方に合っているか”を大事にし始めています。
たとえば、ホテルを選ぶとき。
「快適だから(モノ)」でも「楽しいから(コト)」でも「特別な日だから(トキ)」でもなく、
「このホテルは環境にやさしい取り組みをしている。自分もそうありたいから(イミ)」という選び方をする人が増えています。
同じモノやサービスでも、そこにどんな意味や価値観が込められているかで、感じ方は大きく変わります。
そして、その意味に共感できるかどうかが、選ぶ決め手になっているのです。
言いかえれば、これからの時代は「何を持つか」や「どんな体験をするか」よりも、
「その選択が自分らしさや価値観につながっているか」が一番のポイントになります。
その他に、以下のキーワードもポイントとなります。
「余白」(詰め込まない、感じる)
「物語」(その背景にあるストーリーに共感する)
「ウェルビーイング」(心地よく生きるための選択)
カップルが旅行先で部屋食を楽しむ写真例
「モノ→コト→トキ→イミ」という変化は、マーケティングにも大きく関わっています。
単に「機能や価格」を伝えるだけでは、人の心は動きません。
大切なのは、その商品やサービスを通して、どんな自分になれるかをイメージさせることです。
たとえば、ターゲットがカップルの旅行サイトの写真。
・部屋の広さや設備(モノ)を写すだけでは弱い。
・「どんな体験ができるか」を感じさせる写真(温泉に入る、地元料理を味わう)なら共感されやすい。
・さらに「大切な人と特別な時間を過ごしているシーン」を見せると、「自分もそうなりたい」と心に響く。
キャッチコピーも同じです。
「最新設備のホテルです」よりも、
「大切な人と、忘れられない記念日を」
「自然に包まれて、本来の自分を取り戻す時間を」
といった自己実現に近いベネフィットを伝える方が、選ばれる確率は高まります。
つまりマーケティングにおいては、
機能的ベネフィット(便利・安い)
情緒的ベネフィット(楽しい・癒される)
を超えて、
自己実現ベネフィット(自分らしくいられる・理想の自分に近づける)
をどう表現するかがカギになっているのです。
関連記事:「自己実現ベネフィットとは?マーケティングでの活かし方」
時代は「モノ」から「コト」、そして「トキ」へと移り変わり、いまはさらに「イミ(意味)」が求められるようになっています。
人々は機能や価格だけでは動かず、体験や時間を超えて、**「その選択が自分らしさに合っているか」**を大切にするようになりました。
だからこそ、企業のマーケティングも「商品説明」にとどまらず、
ベネフィット=その商品やサービスがもたらす未来像を伝えることが必要です。
特に「自己実現ベネフィット」──
「私はこうありたい」「こう生きたい」という価値観に触れられるかどうかが、選ばれるかどうかを左右します。
写真ひとつ、キャッチコピーひとつをとっても、
「機能の紹介」ではなく「その人がどんな時間を過ごせるか」「どんな自分になれるか」を想像させる工夫が欠かせません。
企業が今こそ意識すべきなのは、
単なるモノやサービスの提供ではなく、**人の心に寄り添う「意味ある体験設計」**です。
そこにこそ、共感を生み、ファンを育て、長く選ばれるブランドになる道があります。